本年度は、主に、分裂酵母由来のbZIP型転写因子Pap1のDNA結合ドメインとDNAオリゴマーとの複合体結晶の高分解能(2.0Å)の構造決定を行った。bZIP型転写因子は真核細胞において最も大きいファミリーの一つを形成しており、AP-1(TGACTCA)やATF/CREB(TGACGTCA)配列と異なる塩基配列を認識する幾つかのサブファミリーが存在することが知られるようになったが、それらの認識機構は不明であった。構造決定したPap1もその例であり、認識配列はTTACGTAAである。今回の複合体構造では、通常のbZIP型転写因子は塩基配列を認識する塩基性領域において、NxxAAxxCR配列を持つが、Pap1はNxxAQxxFRとなっており、置換しているグルタミンとフェニルアラニンがTT配列の認識に直接関与することがわかったが、興味深いことに、保存されている重要な残基の一つであるアスパラギンは本来、TG配列を認識しているが、本構造では側鎖のコンホメーションを変化させて、TT配列を認識していた。また、低分子量Gタンパク質RhoAとその標的タンパク質キナーゼPKNの結合ドメインの複合体結晶の構造の論文を出版した。
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