研究課題/領域番号 |
09308026
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研究機関 | 姫路工業大学 |
研究代表者 |
吉川 信也 姫路工業大学, 理学部, 教授 (40068119)
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研究分担者 |
酒井 宏明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (00272162)
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キーワード | チトクロム酸化酵素 / 膜タンパク質 / プロトンポンプ / 能動輸送 / ヘムタンパク質 / ミトコンドリア / 電子伝達複合体 |
研究概要 |
1.ウシ心筋チトクロム酸化酵素の酸化還元に伴うカルボキシル基の解離の赤外分光法による解析。 カルボキシル基のC-O伸縮振動は水素イオンの解離によって大きく低波数側に移動するので、赤外分光法によって解離や水素イオン化を解析することができる。重水中で酸化型で1741cm^<-1>にCOOHと帰属することができるピークが還元型では1584cm^<-1>COO^-と考えられるピークに変換されることが赤外域での酸化-還元差スペクトルから明らかになった。さらにこの1741cm^<-1>ピーク強度はheme aとCu_Aのどちらか一方の酸化還元に依存していることが示された。これらの結果と酸化還元に伴うX線構造の変化は、サブユニットIのアスパラギン酸の一つ(Asp51)がheme aかCu_Aの酸化還元に共役して水素イオンを能動輸送することを示している。 2.ウシ心筋チトクロム酸化酵素分子内の水の構造。 サブユニットIとIIの界面に約40個の水分子が固定されていることが明らかになった。これらはO_2還元中心の膜間腔側にあり、2.8Å分解能の構造で水の排出口と考えられていた部分に配置されている。これらの水のほとんどはアミノ酸残基と少なくとも2つの水素結合を形成しており、また水分子間もほとんど水素結合で連結されていた。中央にMg^<2+>イオンを核とする水のクラスターがあり両側に水が一列に並んでいる。Mg^<2+>を含むクラスターはO_2還元部位の膜間腔側に配置されているが、両者の間には芳香族アミノ酸側鎖がはっきりとした疎水性の障壁を作っている。また、またサブユニットIIIの方向に配向している水の配列は中間点に疎水性アミノ酸残基による障壁を持っている。もう一つのサブユニットIIIとは逆の方向に配向している水の配列は疎水性障壁は認められなかったが水分子が強く固定されていることによってが水素イオン輸送を困難にしている。このような水分子の構造はO_2還元部位が水素イオン能動輸送部位ではないことを示唆している。
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