研究概要 |
核内リセプターは細胞外シグナルを直接核に伝える転写因子であり、DNA結合領域とリガンド結合領域(LBD)を有している。無脊椎動物においても様々な核内リセプターが同定されているが、中でもSEVEN-UP/COUP TFは進化的に極めてよく保存されている。ショウジョウバエseven-up遺伝子は複眼形成中,2種のニューロン間の遺伝的スイッチとして働く。SEVEN-UPのLBDの強制発現は種々の神経細胞の細胞運命を変換させる。このことはSEVEN-UP LBDが他の蛋白(蛋白Xと呼ぶ)をtitrateしたために生ずると考えられる。 我々は、蛋白Xは多くの細胞種においてそれぞれの細胞運命決定に関与しており、SEVEN-UP或いは他の転写因子と結合してその標的遺伝子の転写調節に寄与する非常に重要な分子であるというモデルを立て、その検証に努めている。本研究では、SEVEN-UPLBDと結合する蛋白を同定する目的で、酵母Two-hybridスクリーンを行った。得られた遺伝子の塩基配列を決定した結果、205Dクローンは基本転写因子TFIIHの56kDサブユニットであること、401CクローンはPolycombグループに属する二つの蛋白、polyhomeoticとsex comb on middle legと相同性を持つ領域を含むことが判明した。TFIIHは細胞周期と転写をリンクする働きを有することが知られており、発生における細胞運命決定に特殊な機能を持っている可能性もある。Polycombグループ蛋白は、クロマチン構造の変化を介して遺伝子発現を制御するため、401C遺伝子産物はSEVEN-UPによる転写調節を媒介していることも考えられる。これらの遺伝子の遺伝解析を行う目的で、突然変異系統の検索を行い、それぞれの遺伝子近傍にトランスポゾンが挿入された系統を同定した。現在、これらの系統を利用して、機能欠損型アリルの作成を行っている。
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