研究概要 |
ショウジョウバエ核内レセプターSeven-upは個眼の光受容ニューロンのニューロン種を決定する遺伝的スイッチとして機能する.我々はSeven-upがどのようにして標的遺伝子を転写制御し,どのような下流因子を動かすことで特定のニューロンとしての分化を引き起こすことができるのかについて調べた. Seven-upのリガンド結合ドメインとの結合により酵母の2ハイブリッド法で同定されたTFIIHのp52サブユニットと新規SAMドメイン蛋白質Samuelについて,機能解析を行った.まず機能欠失系統を作製したところ,TFIIHp52サブユニットとSamuelの変異系統はともに劣性致死であった.体細胞組み替え法によってp52サブユニットの機能を複眼でのみ喪失させると複眼発生が阻害された.p52サブユニットを過剰発現しても顕著な症状は現れなかったが,Samuelの強制発現は光受容ニューロンがニューロンとして特異化を受けた後,退化した.現在これらの蛋白質がSeven-upによる転写調節において果たす役割を検討している.また,Seven-upの下流因子を同定するため,Differential Display法を用いた探索を行った.Seven-upのリガンド結合ドメインは転写抑制活性を持つので,seven-up遺伝子の機能欠失時に発現量が上昇する遺伝子を検索し,53個の候補遺伝子を同定した.これらの遺伝子は軸索ガイダンス,シナプス標的認識などのニューロン種特異的細胞行動を理解する重要な手がかりを与えると期待される.
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