研究課題/領域番号 |
09309003
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研究種目 |
基盤研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西原 克成 東京大学, 医学部・付属病院, 講師 (10010323)
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研究分担者 |
丹下 剛 東京大学, 医学部, 講師 (10107667)
梁井 皈 順天堂大学, 医学部, 教授 (80114495)
神田 重信 九州大学, 歯学部, 教授 (20014003)
樺沢 洋 京急マリンパーク, 館長(研究真), 館長
蔦 紀夫 広島大学, 工学部, 教授 (80221414)
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キーワード | 骨髄造血、 / 実験進化学、 / 電極骨髄チャンバー、 / 流動電位、 / 主要組織適合抗原、 / 異種移植術、 / 重力作用、 / 免疫系の進化 |
研究概要 |
骨髄造血のメカニズムの解明は、白血病の治療等の観点から今日緊急課題となっている。一方、治療法の確立していない人類にほぼ特有の免疫病発症の予防と治療の観点から、正しい免疫学の概念の樹立もまた緊急課題となっている。本研究は、実験進化学手法を用いて進化における骨髄造血発生の謎を解明し、これを応用して免疫システムの謎を究明することを目的としている。1997年度の成果を以下に記す。本年度は、電極骨髄チャンバーと哺乳類由来のコラーゲン複合アパタイト骨髄チャンバーを、系統発生を代表する原始脊椎動物と哺乳類に移植して得られた所見に基づいて次の二つの重要な仮説を提示し、これを検証する実験を行った。1)骨髄造血の発生が、海中動物の浮力に相殺された1/6Gから上陸にともなう1Gへの対応による血圧の上昇に依存し、これが流動電位に変換され、この電位で軟骨細胞の遺伝子が発現して造血・造骨細胞が供役して誘導される。2)この時同時に主要組織適合抗原も誘導される。3)従って重力作用を受ける前の原始脊髄動物(無顎類と軟骨魚類)と両生類・鳥類・哺乳類との間の交換移植術が成立するはずである。実験の結果、サメに電極を入れてもアパタイト多孔体を移植しても、ともに椎軟骨部に脊椎動物特有の骨化と共役した造血巣が認められた。これはヒヨコのものと形態的に区別ができなかった。また、原始脊椎動物相互間との移植はもとより高等動物への移植も成立した。このことから、原始型には主要組織適合抗原の遺伝子(クラスI,クラスII)はあるが遺伝子の発現のない事が明示された。原始動物は胎児の世界と同様に免疫寛容である事が世界にさきがけて検証された。これにより新しい免疫学の概念が樹立され、同時に骨髄造血の謎と進化の機序が解明された。これを日本人工臓器学会に発表するとともに内科学誌「治療」に12回連載にわたりして発表した。また、科学図書ブルーバックスに「生物は重力が進化させた」として出版し大反響となり、NHK総合テレビにも取り上げられるほどの成果が得られた。
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