光起電型素子InGaAsの性能評価と他のタイプの素子との性能比較を進めた。[暗電流の測定]InGaAsの単素子および16素子一次元アレイを用いて、暗電流の温度依存性を測定した。まず直径1mmの単素子をTIA(インピーダンス変換型アンプ)と組み合わせてインピーダンスの温度依存性を測定したところ、200K付近まで温度を下げると数百GΩ以上にインピーダンスが上昇することが確認できた。さらに低温での測定にはCIA(電荷積分型アンプ)との組み合わせが必要で、しかもこのアンプの入力部のFETの漏れ電流は十分小さい必要があるため、低温でのFETの特性測定から始めて、良好なFETを選んだ。これを用いての低温での暗電流測定を準備中である。[他素子との性能比較の準備]素子数256×256のHgCdTeとInSb検出器を駆動する回路系を製作し、十分な速度と読み出しノイズの低さ(十数電子相当)を持っていることを確認した。この回路系は、さらに汎用に多くのアレイ検出器を同時に駆動できるものに改良中である。[望遠鏡での一次元素子の性能評価]InGaAsの128素子一次元アレイを口径50cmの望遠鏡に搭載し、光ファイバーおよびグレーティング分光器と組み合わせて波長分解能λ/Δλ〜5000の観測システムとした。これを用いてBe型星等の1.2μm付近のスペクトルを取得し、Paβ輝線や吸収線のプロファイルを得ている。この実験で用いているCIAアンプでは暗電流測定時でも数百電子相当のノイズが発生し、良いS/N比での観測を妨げているため、この原因を調べ、128素子の一次元InGaAsアレイも低ノイズ化できないか検討中である。
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