MRSA及び肺炎球菌に抗菌活性を示すポリ酸を基盤とする消毒剤と医薬品の開発

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09354009
• 研究機関: 東京工業大学
• 研究代表者: 山瀬 利博 東京工業大学, 資源化学研究所, 教授 (80016576)
• 研究分担者: 成毛 治朗 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教授 (40237623) ; 竹中 章郎 東京工業大学, 生命理工学部, 助教授 (80016146) ; 茂田 士郎 福島県立医科大学, 細菌学講座, 教授 (00045634) ; 笠野 宏之 株式会社ポリトロニクス, 研究開発部, 専務
• キーワード: MRSA / ポリタングステン酸イオン / ベータ ラクタマーゼ / ポリ酸 / ペニシリン結合蛋白質 / PBP2'

研究概要

ポリタングステン酸イオン(以下、ポリ酸)のメチシリン耐性黄色ぶどう球菌(MRSA)に対するメチシリン共存下での強い増殖抑制作用は、ポリ酸がMRSA細胞膜に蓄積してPBP2'、β-ラクタマーゼの産出を抑制し、さらにメチシリンによるPBP1-4の不活性化との組み合わせで起こることを明らかにしてきた。本年度は以下に示すように引き続きその詳細を明らかにする((1)、(2))とともに、ポリ酸のMRSAに対する新たな効果も見出した(3)。
(1) MRSA菌体内へのポリ酸の取り込みと発現抑制は2時間以内に完了し、その間にβ-ラクタム抗生物質を共存させると増殖を最も効果的に抑えること。
(2) MRSAに取り込まれた[PTi_2W_<10>O_<40>]^<7->(PM-19)の菌体内での分布を、TEM+エネルギー分散型蛍光X線により調べたところ、ポリ酸は金属組成(Ti:W=1:5)を維持したまま細胞膜付近に蓄積されていた。
(3) MRSA菌体を最小生育阻止濃度以下のポリ酸(PM-19)存在下で継代すると耐性が消失して感受性に変化することを見出した。しかし感受性となった菌体のPBP2'、β-ラクタマーゼ産出への影響は認められなかった。

研究成果

• [文献書誌] N.Fukuda: "Inhibitory Effect of Polyoxotungstates on the Production of Penicillin-binding Proteins and β-Lactamase against Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus"Biol. Pharm, Bull.. 22. 463-470 (1999)
• [文献書誌] E.Ishikawa: "Kinetics of Epoxidation of Cyclooctane with H_2O_2 by α-Keggin [Pti_2W_<10>O_<38>(O_2)_2]^<7-> Catalyst in Acetonitrile"J. Mol. Catal. A. 142. 61-76 (1999)
• [文献書誌] T.Yamase: "X-ray structual Characterization of Molybdate-tripeptide Complex, [Mo_4O_<12> (glycylglycylglycine)_2]・9H_2O"Chem. Lett.. 563-564 (1999)
• [文献書誌] T.Yamase: "Structure of MoO<(2-/4)>-Encapsulted Mixed-valent Cluster [V_<22>O_<54>(MoO_4)]^<8-> and Template-exchange Reaction of [V_<18>O_<42>(H_2O)]^<12->"J. Mol. Catal. A. 147. 179-190 (1999)
• [文献書誌] C.Hu: "Photoassisted Dehalogenation of Organo-chlorine Compounds by Paratunystate A in Aqueous Solutions"Appl. Catal.. (in press). (2000)
• [文献書誌] H.Naruke: "Na_<10>(glycine)_2[H_2W_<12>O_<42>]・28H_2O"Acta Crystallogr. Sect. C. C56. 177-178 (2000)
• [文献書誌] 山瀬利博: "希土類の化学"化学同人. 37 (1999)
• [文献書誌] 山瀬利博: "ウィルス感染症の治療"医薬ジャーナル(印刷中). (2000)