微弱光源を用いた高性能フォトダイオードアレイ分光光度計の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09354010
• 研究種目: 基盤研究(A)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 七田 芳則 京都大学, 大学院・理学研究科, 助教授 (60127090)
• 研究分担者: 佐藤 辰己 (株)島津製作所, 分析機器事業部・技術部, プロダクトマネージャ
• キーワード: 光 / 分光光度計 / フォトダイオードアレイ / タンパク質 / 光反応 / 生体試料 / 高速 / 低温

研究概要

島津製作所が開発した汎用型フォトダイオードアレイ(PDA)分光光度計を原型として高性能PDA分光光度計を制作した。また、光受容蛋白質の研究を通してその性能を評価した。その結果、以下の研究成果が得られた。
1.入射光の強度を減少させた入射装置の作製
汎用型PDA分光光度計は、高輝度のタングステン-ハロゲンランプを光源として用いているため、光反応性の高い光受容蛋白質は退色してしまい、その分光学的研究には適していなかった。そこで、電磁シャッターシステムの導入により測定時以外の入射光をカットし、また減光フィルターを導入することにより、試料へ入射する光量を、試料が光反応を起こさない適度な量まで減少させることに成功した。また、この目的のために、制御ソフトウエア、ハードウエアを開発したが、システムの時間安定性を評価した結果、時間分解低温分光法による光受容蛋白質の研究に適用可能であることが分かった。
生体試料を冷却するための装置の配置
上記の試験の結果、2秒の時間分解能で750-190nm測定が可能な高性能PDA分光光度計を光受容蛋白質の研究に適用することが可能になった。そこで、実際に光受容蛋白質を用いて熱的に安定な状態で実験を行うため、環流冷却装置およびクライオスタットを配置可能なシステムを作製した。その際、空気中の水蒸気によって生じる霜を排除するための装置、および、生体試料を少量で測定できるための装置も導入した。さらに、外部及び光源部分から漏れる光を遮断し、光受容蛋白質を用いた実験を安定に行うことに成功した。

研究成果

• [文献書誌] H.Imai: "Single amino acid residue as a functional determinant of rod and cone pigments." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 94. 2322-2326 (1997)
• [文献書誌] T.Nagata: "Water and peptide bockborn structure in the active center of bovine rhodopsin." Biochemistry. 36. 6164-6170 (1997)
• [文献書誌] H.Imai: "Photochemical and biochemical properties of chicken blue-sensitive cone visual pigment." Biochemistry. 36. 12773-12779 (1997)
• [文献書誌] D.Kojima: "A novel Go-mediated phototransduction cascade in scallop visual cells." J.Bio.Chem.272. 22979-22982 (1997)
• [文献書誌] S.Tachibanaki: "Presence of two rhodopsin intermediates responsible for transducin activation." Biochemistry. 36. 14173-14180 (1997)
• [文献書誌] S.Tachibanaki: "Identification of a new intermediate state that binds but not activate transducin in the bleaching process of bovine rhodopsin." FEBS lett.(印刷中). (1998)
• [文献書誌] R.Akiyama: "Analysis of excited state dynamics of 13-trans-locked-bacteriorhodopsin." J.Phys.Chem.101. 412-417 (1997)
• [文献書誌] A.Wada: "Retinoids and related compounds.Part 20.Synthesis of 11-Z-8,18-ethanoretinal and conformational study of rhodopsin chromophore." Chem.Soc.Perkin Trans.1. 1773-1777 (1997)
• [文献書誌] T.Kakitani: "Deuterium substitution effect on the excited state dynamics of rhodopsin." J.Phy.Chem.(印刷中). (1998)
• [文献書誌] Y.Shichida: "Visual Pigments." J.Cell,Mol.Life Sci.(印刷中).
• [文献書誌] 今井啓雄: "時間分解低温分光法による蛋白質構造変化の解析" 生物物理. 37. 225-226 (1997)
• [文献書誌] 七田芳則: "生物物理から見た生命像4 視る感覚 「光のセンサー;視物質」(分担執筆)" 吉岡書店, 127 (1997)
• [文献書誌] 七田芳則: "視覚、図で学び絵で見るレーザー科学入門(分担執筆)" 丸善, (CD-ROM) (1997)