生物試料測定のために測定光強度を減じたPDA分光光度計を作製し、視物質などの生体試料の比較的反応速度の大きい構造変化過程の観測に適用可能かどうか評価した。具体的には、島津製作所製の汎用型PDA分光光度計(MultiSpec-1500)をベースとして、以下の改造をおこなった。 (1) 光学フィルターを光源と試料の間に設置することにより、測定光強度を抑制した結果、試料の光反応を10分の1に削減することができた。また、電磁シャッターを検出器と同期するように取り付けることにより、測定時以外の光反応を抑え、試料の光反応を3分の1に削減することができた。すなわち、両者を併用することにより、試料の光反応を30分の1に削減した。 (2) 上記の減光型PDA分光光度計に試料冷却装置(恒温糟連結型試料セル、クライオスタット)および試料光照射装置を取り付け、ウシの網膜から調製したロドプシンの構造変化過程およびG蛋白質との結合過程を観測した。その結果、従来反応速度が高すぎて-20℃まで試料を冷却しなければ観測できなかったロドプシンの構造変化過程(メタI→メタII)を、0℃で観測することに成功した。また、ロドプシンから分子間相互作用により光情報を受け取るG蛋白質であるトランスデューシンとの相互作用過程を観測した結果、トランスデューシンの添加によってメタII-トランスデューシン複合体が生成する反応過程を、570nmから330nmの波長領域のスペクトル変化として観測することが可能になった。
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