昨年までに開発した超小型高分解能 RBS 装置の性能評価を行った。まず、エネルギー分解能に関して292keVのHeイオンに対して0.33keVの分解能が得られた。これには、入射イオンのエネルギー幅も含まれており、エネルギー分析器自体の分解能は設置値の0.1%を達成していると考えられる。 次に、一般にRBS法では分析が難しい軽元素の高分解能測定を、開発した高分解能RBS装置を用いて行う可能性を調べた。その結果、開発したエネルギー分析器が受け角の大きい明るい設計になっており、散乱角が多少異なった散乱イオンを測定するために生じる、いわゆるkinematic broadeningが無視できないことがわかった。このため、特に軽元素に対して見かけ上の分解能を劣化させることになる。これを補正するための静電型の4重極レンズを設計し、それを分析器に設置して補正性能を調べた。レンズは設計どおりの動作をすることが確かめられ、軽元素に対しても原子レベルの深さ分解能で分析が可能であることがわかった。これを用いて、極薄(2.5nm)のシリコン酸窒化膜中の窒素の深さ分布の測定に成功した。この結果、従来の2次イオン質量分析法(SIMS)などではきわめて困難であった、極薄酸窒化膜中の窒素の深さ分布を原子レベルの深さ分解能で測定できることが示された。さらに、研究を進めてSIMSの較正法を開発中である。 また、Si(001)表面酸化の極初期過程を高分解能RBS法で観察し、1原子層以下の酸素の定量と深さ分布の測定が可能であることを示した。酸化がlayer-by-layerで進行することや、室温における酸化では表面第1層のシリコンが完全に酸化していないことを見出した。
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