研究概要 |
本年度は,融点183℃の電気配線用のハンダを電気信号によって噴射するノズルの設計と製作を行った.ノズルの原理は,圧電アクチュエータによって容積を変化させることができるチャンバーに直径200μm程度のノズルを設け,内部を溶融ハンダで満たした状態で圧電アクチュエータを駆動してノズルから液滴を噴射させるもので,昨年度製作した低融点合金用のものと基本的に同じである.但し,ハンダの融点は圧電アクチュエータの作動温度よりも100℃以上も高いため,圧電素子を保護するための放熱・断熱機構を新たに加えたほか,各所の設計を耐熱性を考慮したものに改めた.このような装置でメタルの噴射のための最適な駆動電圧やその波形,溶融金属の温度などの諸条件の探索を行い,直径およそ300μmの溶融ハンダ液滴を安定して噴射できる条件を見い出した.さらに,ハンダ粒子を基板上に平面的に堆積した上で高さ方向に積層し,3次元構造体を作ることができた.また,ハンダ粒子を二次元的に基板に噴射させて平面状の電気配線を作成したり,ハンダと絶縁性の樹脂との組み合わせによって三次元配線を製作した.そして,これらの配線の電気抵抗率の測定を行い,試料を大気中で作成した場合にはバルク体の2倍から3倍程度と比較的抵抗が大きいものの,配線を作成した後で融点直下の温度で配線を再溶解させることで電気抵抗率がバルク体とほぼ同じ程度にまで低下することを見い出した.そして,従来からあるプリント配線にハンダを噴射させて電気的接合を行うことを想定して,ガラス基板に金を蒸着したものに溶融ハンダを噴射し,冷却後にハンダと金蒸着膜間の電圧電流特性を測定した.その結果,接合は良好で,ハンダジェットを用いた配線や接合が十分実用になる可能性があることが示された.今後は,メタルジェット方で作製した試料や配線などの引っぱり強度やせん断強度などの機械的性質の評価を行う予定である.
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