研究概要 |
現在、CDやDVDなどの高密度光記憶装置が普及しているが,近い将来に予想される高画質の動画を長時間にわたって記憶するような用途には記憶容量が不足している。これらの光記憶媒体は記憶容量が原理的な限界にほぼ達しており,新しい超高密度記録方法が求められてる。そのような手法として,我々は石英ガラスを用いた三次元光記録方法を提案し,研究を行っている。これまでに,ピコ秒およびフェムト秒のレーザーパルスによりコントラストが高く通常の光学顕微鏡で認識が可能なビットが石英ガラス中に生成し,これを用いて三次元記録が可能なことを報告してきた。さらに,本課題研究により,このビットは欠陥由来の発光を示し,発光を検出することによっても三次元的な読み出しが可能なことを示した。そこで,今年度は,書き換え型記録への応用を考慮して,ビットの消去について検討した。 ビットは熱的に極めて安定であり,ビットを記録した石英ガラスを1150℃でアニールしても光学顕微鏡像に変化が現れないことは既にわかっていたが,アニールしたガラスの室温における発光スペクトルを測定したところ,著しい変化を見出した。アニール温度300℃で発光が減衰し始め,500℃でアニールすると発光強度はほぼ0となった。この結果から,発光による読み出しを利用すると,書き換え可能なメモリーを構築できる可能性がある。また,前述のように光学顕微鏡像には変化が無いため,多重メモリーとしての利用も考えられる。さらに,各温度でアニールしたサンプルのESR測定を行い,発光を示す欠陥の起源について考察した。
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