結晶格子を基準とした測長では、測長に要する時間をなるべく小さくすることが有効であることを明らかにした。その結果、真直度の保証されたリニアステージに結晶を固定し、その動きをプローブでモニタする方法が有効であると判断した。リニアエンコーダにとって重要な性能は、カウントミスなしに格子を読みとれる最大速度である。この観点から実験を行った結果、雲母の場合は1ミクロン/s程度、グラファイトの場合は20ミクロン/s程度であった。後者の限界速度が遥かに高いのは、グラファイトが疎水性で、表面の水による影響が少ないためだと考えられる。後者の場合、限度速度はカンチレバーの機械的固有振動数によって制限されていた。よって、固有振動数の高いカンチレバーを用いることにより、さらに限界速度を向上させることが可能であると考えられる。我々は、固有振動数が1000倍程度のカンチレバーの作製を行っており、それを用いると、mm/sからcm/sのカウントレートが実現できると考えている。 結晶の摩減については、雲母の場合は、押し付け力が50nN以下だと摩耗がすすまないか、表面の1原子層だけが剥離することが確かめられた。この摩減実験は数100時間行った。 現在、一波長を640分に分周したヘテロダインレーザ干渉計を用いて、結晶格子とレーザ波長との対応、提案した手法の安定度を計測している。 近い将来、指定した構成と環境下において、提案した手法の誤差評価が可能となる。最終的には、リニアエンコーダを3軸組み合わせた形での三次元測定器が実現される。
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