研究概要 |
従来のガラス組成探索による超低損失ガラスの研究開発とは一線お画し、ガラス本来有する究極の伝送特性を得ることを目的として、石英ガラスの液体〜ガラス状態での諸物性の研究を進めている。本年度の進捗状況は以下のとおりである。 (1)シリカガラスの構造緩和過程を光散乱測定および赤外吸収測定により詳細に調べた。その結果以下のことが明らかとなった。 (1)Cl,Na,AlおよびOH基などの不純物の添加により、粘性流動に支配されたα緩和が促進される。 (2)CL,Na,AlおよびOH基などの不純物の添加により、α緩和以外の副緩和が発生し、添加量の増加に伴って緩和が促進される。 (2)超広温度領域真空紫外分光測定装置(-269℃〜2000℃)を開発し、(1)Urbach端の測定による電子の局在状態の研究、(2)欠陥の凍結過程の研究、および(3)構造緩和過程と紫外線誘起欠陥生成量の研究を開始した。 (1)の結果は不純物の添加によりシリカガラスの構造緩和過程を系統的に制御できることを示しており、目的とする超低損失ファイバ用ガラスの開発にとって重要な知見が得られたと考える。また、(2)の結果は、紫外用ファイバの開発や欠陥を機能中心としたさまざまな機能性材料(例えばファイバグレーティングや2次非線形材料)の開発につながると考えている。
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