研究概要 |
本年度は次の三つの新反応について検討し,予期した成果が得られた。 1. メタンとCOより酢酸合成 種々のV化合物を用いて触媒活性を検討した結果,VO(acac)_2やVOSO_4が触媒として活性が高いこと,酸化剤としてはK_2S_2O_8がよいこと,溶媒としては水でも反応は進行するが,CF_3COOHが最もよいこと等が明らかになった。例えば,VO(acac)_2/K_2S_2O_8/CF_3COOH触媒系を用いてメタン(5気圧)とCO(20気圧)をオートクレーブ中,80℃で20時間反応させると,酢酸がメタン基準で93%収率(TON:18)で得られた。この結果は,これまでの最高収率であり,現在工業化を目指して,酸化剤のK_2S_2O_8を安価な酸素に替えて反応を検討中である。また,反応機構の解明のために^<13>C同位体の^<13>CH_4や^<13>CDを用いて反応を行い,酢酸はメタンとCOより生成することを確認した。 2. メタンから酢酸エステルの合成 メタンの液状化(例えばメタノールへの変換)は工業的に重要な課題の一つである。そこで,種々の触媒を用いてメタンのエステル化反応を検討した結果,V含有ヘテロポリ酸が触媒として高活性を有することがわかった。例えば,H_5PV_2Mo_<10>O_<40>/K_2S_2O_8/(CF_3CO)_2O/CF_3COOH触媒系を用いてメタン(10気圧)を80℃で20時間反応させるとトリフルオロ酢酸メチルがほぼ定量的に得られた。このメチルエステルは加水分解により容易にメタノールとCF_3COOHを与えるので,メタンからメタノールを2段階で合成できることになり,本反応は工業的に重要である。 3. 芳香族化合物とCOにより芳香族カルボン酸の合成 Pd(OAc)_2/K_2S_2O_8/CF_3COOH触媒系により,ベンゼン,トルエン,クロルベンゼン,アニソール,ナフタレン等の芳香族化合物がCOにより,常温常圧という極めて温和な条件下でカルボキシル化され芳香族カルボン酸を高収率で与えることを見いだした。
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