研究概要 |
本年度は最終年度にあたるので、これまでの研究をまとめると共に、次の新反応について検討した。 1.メタンとCOより酢酸の合成 これまでに,PdやV触媒によりメタンとCOより酢酸が合成できることを見いだしているが,さらに種々の金属触媒について検討した結果,アルカリ土類金属のMgやCaが触媒活性を有することが明らかになった。特にCaCl_2は活性が極めた高く、メタンとCOよりほぼ定量的に酢酸が得られることを見いだした。例えば,メタン(2atm)とCO(30atm)をオートクレーブ中でCacl_2(0.5mmol),K_2S_2O_8(5mmol),トリフルオロ酢酸(TFA,5ml),無水酢酸(TFAA,2mmol)の存在下、85℃で140時間撹拌して反応させると,酢酸がメタン基準94%収率で得られた。Caなどのアルカリ土類金属は安価であるので,工業化に際して有利であると考えられる。 2.メタンより酢酸エステルの合成 V含有へテロポリ酸触媒がメタンのエステル化によるトリフルオロ酢酸の合成に有効であることは前年度の研究により明らかにしているが、さらに触媒について検討した結果,酢酸銅(Cu(OAc)_2)が高活性を有することが明らかになった。例えば,Cu(bAC)_2/K_2S_2O_8/TFA/TFAA系触媒を用いて,メタン(20atm)を100℃で20時間反応させると,トリフルオロ酢酸メチルがメタン基準90%収率で得られた。このように安価な銅触媒により,メタンのエステル化が可能になり,このエステルを加水分解すると容易にメタノールが得られるので,本反応はメタンの液状化及び炭素源としての利用の両観点から重要である。 3.芽香族化合物とオレフィンのカップリングによる芽香族置換オレフィンの合成 我々は,Pd触媒により芽香族化合物がオレフィンと反応して芽香族置換オレフィンを与える反応を見いだしているが,さらに触媒系の検討により,Pd(OAc)_2/ベンゾキノン/t-BuOOHIAcOH-Ac_2O系触媒が活性が高く,Pdのターンオーバー数は260に達することを見いだした。 4.芽香族化合物のアセチレン類への付加による芽香族置換オレフィンの合成 さらに,Pd(OAc)_2/TFA系触媒により,芽香族化合物のC-C多重結合への付加による芽香族置換アルケン及び-アルカンの新規合成反応を見いだした。詳細はscience誌に掲載される予定である。
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