研究概要 |
1. 昨年度の研究で淡水魚肉(コイ)の加熱ゲル形成能が低い原因として,坐り反応が起きないこと,及び53℃で起きる非プロテアーゼによる戻りが強いことを明らかにした。そこでトランスグルタミナーゼ(TGase)による坐りの導入を図ったところ,顕著なゲル形成の増強効果が認められた。本年度は坐りゲル化の最適条件を検討した。その結果,坐り温度は30℃,酵素量は1 unitの時に反応時間4時間,あるいは3 unitで2時間が最適であることがわかった。コイの内因性TGaseでは5 unitまで酵素量を増やせば坐り時間を短縮できたが,微生物由来の酵素(MTGase)では最適添加量を越えた場合,ゲルは固くなるが破断しやすく脆くなった。この原因はMTGaseがミオシンよりもコネクチンを良く架橋重合し,さらにコネクチンとアクチン及びミオシン相互間も架橋できるために架橋が過剰に形成され,均一に組織化されなくなるためであると推定された。 2. 53℃で起きる非プロテアーゼによる戻りの抑制はTGase添加では効果が得られなかったので,火戻り抑制効果か知られているアルコール類を肉糊に添加してみたが,この戻りの抑制には効果がなかった。 3. スケトウダラすり身肉糊の変性においては,加熱ゲル化能が最も速く,次いで内因性TGase活性の順に失活し,Ca-ATPase活性の失活は遅いことを明らかにした。また,変性すり身肉糊にTGaseを添加しても坐りの効果は部分的にしか回復しなかった。 4. ホタテ貝柱肉の加熱ゲル形成能が低い原因を昨年から検討していたが,ホタテ筋肉中のTGase活性は高NaCl濃度下およびCa2+下で強く活性化されることを発見した。そこで,この条件下でかまぼこゲルを形成させたところ,弾力性のある固いゲルが形成された。
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