研究概要 |
昨年に引き続き加熱ゲル形成能が劣りねり製品に不向きな淡水魚(コイ)やサケ等の他に、ねり製品の多様化を図るために貝(ホタテガイ)の肉にゲル形成能を付与するための技術開発を実施した. 1.サケとコイ肉糊(アクトミオシン・ゾル)はいずれも坐りを導入しないと足の強い加熱ゲルは製造できないことが確認された.トランスグルタミナーゼ(TGase)による坐り導入の至的条件はサケでは1unit/gのTGaseで30℃,2時間の坐りである.コイでは3unit/gTGaseで30℃,4時間;または5unit/gTGaseで40℃,1時間の坐りが最適であった. 2.非プロテアーゼによる戻りはTGaseによる架橋重合の影響を受けないが,コイの場合,TGaseで40℃坐りの場合はこの戻りを軽減できた. 3.プロテアーゼによる戻りは加熱温度で異なり30℃以下ではコイのミオシンの分解は起きないが,40℃ではシステインプロテアーゼが作用し,50 55℃ではセリンプロテアーゼが作用するので,これらの阻害剤はゲルの強化に役立った.一方,サケではカテプシンLの作用が主であった. 4.プロテアーゼ阻害とTGase坐りを同時に行うと,TGase活性が低いときにはプロテアーゼ阻害剤は足の強化に役立ったが,TGase活性を強くすると架橋形成によって戻り自体がなくなった.TGase架橋が強いとゲルはむしろ堅くなり過ぎ弾力性を失った. 5.ホタテガイ肉糊では内在TGaseで架橋して弾力のある製品となる条件を見つけた.パラミオシンはTGaseの影響を受けないが,強いゲルを形成した.プロテアーゼによる戻りはほとんど起きないが,非酵素的戻りは魚ほど強くなかった.
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