研究課題
基盤研究(A)
我々は分化した脂肪細胞(3T3L1細胞)へのアデノウイルススベクターを用いた遺伝子導入発現を世界に先駆けて成功した。この方法を用い、PI3キナーゼの活性化を阻害するdominant negativeなp85サブユニットを発現させると、インスリンによる糖輸送促進効果ならびにGLUT4のトランスロケーションへの効果は著明に抑制され、インスリンによる糖輸送促進におけるPI3キナーゼ活性化の重要性が確認された。さらに、dominant negativeなRasの変異体を発現させてインスリンによるRasの活性化を阻止した検討から、3T3L1脂肪細胞ではインスリンによる急性の糖輸送促進機構にRas活性化は関与しないことを明らかにした。インスリン非依存型糖尿病で認められるインスリン分泌障害についてもアデノウイルスベクターを用いて解析を進めた。このインスリン分泌障害の原因として膵β細胞でのミトコンドリアグリセロールシャトルの障害が指摘された。そこで、このシャトルの重要な酵素であるミトコンドリアグリセロリン酸脱水素酵素(mGPDH)の遺伝子をクローニングし、さらにインスリン非依存型糖尿病患者で遺伝子変異を検討した。また、糖尿病モデル動物であるGKラットの膵でも、この酵素活性の低下がインスリン分泌障害の原因として指摘されていた。そこで、このラットの膵ラ氏島にアデノウイルススベクターを用いて遺伝子導入・発現を行い、この酵素活性の低下を改善させた。しかし、グルコース刺激によるインスリン分泌は回復せず、GKラットにおけるインスリン分泌障害の原因がmGPDH活性の低下にはないことを明らかにした。また、ポジショナルクローニングにより、Wolfram症候群の原因遺伝子を世界に先駆けて成功させたほか、若年発症成人型糖尿病(MODY)患者で見出されたHNFlα遺伝子異常によるインスリン分泌障害、さらに、わが国の新生児低血糖症患者17例においてスルフォニル尿素受容体の遺伝子異常を3例に見出し、アデノウイルスベクターを用いた発現系を用いて、その分子機構を明らかにした。
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