天然由来生体高分子材料であるコラーゲンは細胞外マトリックスとして、生体の分化、増殖、修復、維持に大きな役割を果たしている。このコラーゲンを用いて生体の細胞がどのような再生過程をとってゆくのかを明らかにした。このコラーゲンの足場を与えることにより自己組織や自己臓器を再生誘導するという全く新しいバイオ人工臓器を開発している。昨年に引き続き、人工食道、人工気管、人工血管、人工神経を試作して、主にイヌに埋入実験を行っている。人工食道では、イヌの胸腔内に15cm長の人工食道を入れて、2カ月間にわたりIVH管理を行い、食道組織の再生を観察した。2カ月後に埋入したコラーゲンには自己組織が入り、結合織管が形成されることが判明した。しかし、内ステント抜去後、この管は急速に収縮狭窄して、このためにイヌは死亡する。このステント抜去後の狭窄を防ぐことがこの実験の結果を向上させる鍵と思われた。人工気管では、気管壁の改良を行い、空気瘻を防ぐとともに、自己組織の再生分化を促進するコラーゲンスポンジを複合化することにより、成績の向上を目指した。この結果、気管分岐部のY型置換において、1998年秋より手術成績は飛躍的に向上した。現在、分岐部再建に成功したイヌは10頭を越えている。人工血管もこれまでのフタの頚動脈から作成したXENO人工血管をイヌの腹部大動脈に移植する実験を続けている。ブタの血管構成細胞をdetergentを除去し、へパリン化して抗血栓性を付与する手技を確立している。人工神経は、末梢神経をコラーゲンチューブで連結する方法を続けており、ラミニンをコーティングしたコラーゲン線維をチューブに充填して8cmの間隙を急速に再生させる実験に取り組み、その再生に成功した。
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