研究概要 |
申請者らは,がん細胞に特徴的なエネルギー代謝系のキャラクタリゼーションと,これをターゲットにした抗がん剤の開発研究を行っている.これまでの研究で,がん細胞では多量に発現したII型へキソキナーゼが,ミトコンドリアに結合して,解糖活性の亢進に寄与していることをつきとめてきた. 本研究では,1)がん細胞のエネルギー代謝系を構築しているマシナリーの同定と2)エネルギー代謝調節におけるポーリンの役割の解析を行い,それぞれをターゲットとした抗がん剤開発の可能性を検討した. 1)の解析の結果,細胞のがん化のシグナルおよびその悪性化のシグナルに呼応して,II型へキソキナーゼと1型グルコース輸送担体の転写が協調的に亢進し,がん細胞に特徴的な糖代謝系を構築していることが明らかになった.従って,1型グルコース輸送担体とII型へキソキナーゼの協調的な転写亢進の分子機構が,抗がん剤開発の良好なターゲットになることを結論した. また2)の問題に関しては,がん細胞で多量に発現したII型へキソキナーゼのミトコンドリア膜上での結合部位がポーリンであることに注目してがん細胞に発現したポーリンの同定を進め,a)がん細胞では少なくとも2つのアイソフォーム,VDAC1およびVDAC2が発現していること,ならびにb)ミトコンドリア膜に局在しているのはこれらのうちVDAC2であることを見いだした.現在,VDAC2とII型へキソキナーゼの相互作用の様式に関する研究を進め,抗がん剤開発に際してのターゲットとしての可能性を検討中.
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