大腸菌O157には、生産する毒素の種類等において異なる様々な菌株が存在するため、まず、多様な大腸菌O157株を分離した。牛枝肉、健康牛の糞便、下痢症患者から、約100株の大腸菌O157を分離した。これらの菌株の遺伝子解析及び生産する毒素タイプの分析によって多様な大腸菌O157が得られたことを確認した。また、研究代表者等が開発したアラニンラセマーゼ遺伝子を標的とする大腸菌の迅速検出法が、多様な大腸菌O157を検出可能なことを確認した。分離した大腸菌O157を用いて、種々の食品中での大腸菌O157の増殖曲線を調べた。多くの食品は冷蔵庫に一時保存されるため低温での増殖を検討した。その結果、牛肉・豚肉・鳥肉の中では、豚肉中での増殖が最も早く、次いで、鳥肉、牛肉の順であった。野菜類や乳製品では、食品の種類によって増殖速度がことなり、また、野菜の表面と内部でも増殖速度が異なっていた。また、じゃがいもにおいては、保存初期に増殖抑制効果が見られたが、後に急激な増殖が認められた。現在、大腸菌O157の増殖を抑制するじゃがいも成分を解析すると共に、各種の保存性の高い食品や伝統食品等の中から、大腸菌O157の増殖に阻害的な食品を検索中である。
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