光ピンセットをカンチレバ-として用いた原子間力顕微鏡(光ピンセット力顕微鏡)の開発をすすめた。既存の原子間力顕微鏡では試料を押す力が強く、水溶液中の柔らかい生体試料の場合はこれを変形させてしまうため、正確な観察ができなかった。光ピンセット力顕微鏡では、光ピンセットで金コロイド(半径20nm)をトラップし、金コロイドをプローブとし、光ピンセットをカンチレバ-とすることによって、試料を押す力を1/300程度にまで減らした。これによって、同時に、分子間相互作用の力の測定感度を300倍向上させた(0.05-10pN)。装置全体は、倒立蛍光ノマルスキー顕微鏡上に組み立て、通常の光学顕微観察をおこないつつ、面白い部位を見つけたら、そこに光ピンセットでプローブを持っていき観察できるようにした。直径200nmのビーズにトランスフェリンを結合させ、それを、培養繊維芽細胞上のトランスフェリン受容体に結合させた。この場合は、受容体が、細胞膜のプローブとなる。このプローブを膜上で走査し、受容体に細胞から働く力を各ピクセル毎に求め、働く力に基づく細胞像を得た。線維状構造体が観察されたが、細胞膜上の受容体を閉じこめる効果を持つ膜骨格が可視化されているものと考えられた。
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