本研究の目的は、光トラップ(光ピンセット)をカンチレバーとし、光トラップに3次元的に捕捉された金コロイド微粒子に結合させた抗体や他のタンパク質を探針とする、走査力顕微鏡(Scanning Force Microscope)を開発することである。この方法の応用範囲は広いが、特に、細胞膜の研究に適しており、細胞膜の領域構造の研究に応用しつつ、開発を進める。ライフサイエンス分野の多くの応用において、通常の原子間力顕微鏡にまさる方法にするのが目標である。本研究においては、原子間力顕微鏡のカンチレバーの部分を光トラップで置き換える。さらに、探針(または膜タンパク質などが探針となるときには、これに力を伝えるトランスデューサ)は特定のタンパク質を結合させた金コロイド微粒子(直径40nm)、または、ラテックスビーズ(直径210nm)である。バネ定数は、前者の場合0.03-10pN/mm、後者の場合0.1-50pN/mmの範囲で変えられる。 本年度は、特にOT-SFMを細胞膜の研究に応用しつつ、装置の改善、実用化をはかった。主題は、膜タンパク質の局在化・集合の機構、および、それに果たす膜裏打ちタンパク質ネットワーク/細胞骨格の構造変化の役割、膜タンパク質-細胞骨格相互作用の役割の解明であった。具体的には、プローブの調製法を確立した。さまざまな工夫の結果、一価性に近い金コロイド微粒子を、うまい場合には調製する事ができた。これをさらに進め、多くのタンパク質やモノクローナル抗体について、一価性、または、一価のように振る舞う金コロイド-タンパク質複合体の調製法を開発していくことが、今後の課題である。さらに、装置の実用試験を細胞膜について行い、多数の改良を加えた。
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