研究課題
基盤研究(A)
超弾性チタンニッケル合金は、大きな変形を与えても元の形状に復帰することから、歯科治療にはさまざまな応用が考えられる。しかし、この合金はニッケルを多く含むため、ニッケルイオンの溶出が懸念される。このようなことから本研究では、チタンニッケル合金に第3元素を添加することにより、ニッケルイオンの溶出を極端に抑制した安全性の高い超弾性合金を開発することを目的としている。それと同時に歯科精密鋳造の研究および生体安全性の確認を行なう。また歯科臨床応用への新しいデバイスの検討を行なう。チタンニッケル合金に添加する第3元素として、まずパラジウムについて検討した。チタンとニッケルが原始比で1:1の合金において、ニッケルをパラジウムで10から20%置換した合金を作製し、力学的性質を検討した。その結果、ニッケルをパラジウムで15%置換した合金、すなわちTi-42.5Ni-7.5Pd(mol%)合金は、本来形状記憶効果しか期待できない、Ti-50Ni(mol%)合金と同程度の低い耐力でありながら、人間の体温で超弾性を示すことがわかった。このことは、しなやかさと超弾性とは相反するというこの合金の常識を覆すものである。この合金を用いることにより、超弾性でありながらしなやかさを必要とするような部分などへの応用が可能となる。また、チタンとニッケルの割合を変えることにより、しなやかさの調節が可能である。さらに、ニッケルをパラジウムで置換することにより、しなやかさの調節が可能である。さらに、ニッケルをパラジウムで置換することにより、ニッケルの含有量を少なくすることが出来るため、ニッケルの溶出量も少なくなるのではないかと考えられる。