研究概要 |
本申請は、蛋白質分子の熱揺らぎを選択的に外部から直接制御し、その機能がどのように変化するのかを検出するシステムを開発し、モーター蛋白質であるミオシン分子の熱揺らぎを制御して、化学反応と力学反応に熱揺らぎがどのように関わっているかを探ることを目的とした。その結果、以下のような研究成果をあげた。 (1)表面プラズモン共鳴によるエバネッセント場の増強法の開発 金属薄膜と溶液の界面における表面プラズモン共鳴を利用した光学顕微鏡を作成した。Ag,Au,Alの薄膜表面において、エバネッセント場を2から10倍増強することに成功し、Au,Alの表面では、モーター蛋白質1分子の運動を実時間イメージングすることができた。 (2)ミオシンの化学反応と変位の1分子同時測定法の開発 エバネッセント顕微鏡による1分子イメージング法と光ピンセットによる、nm,pNレベルの変位と力の測定系と組み合わせ、ATPase反応と滑り運動を1分子同時測定する方法を開発した。アクチン-ミオシン間の滑り運動において、化学反応と力学反応の間に数百ミリ秒の遅れが生じる場合があることを発見した。 (3)機能状態の蛋白質分子の熱ゆらぎの測定法の開発 a.光ピンセット法:アクチンフィラメントの両端にビーズを付けて2つの光ピンセットで伸展させ、トラップ中のビーズの回転拡散を測定した。ミオシン蛋白質の存在下で、ATPの有無によって回転弾性率は変わらなかったが、回転の振幅は増加した。これは、アクチン-ミオシン間のエネルギー授受を意味している。 b.マイクロニードル法:バネ係数が0.1pN/nm程度のやわらかいガラスニードルの先端にミオシン分子1個を捕捉する技術を開発した。ATP存在下でミオシン分子がアクチンフィラメント上を5.5nmのステップでバイアスのかかった熱ゆらぎをする様子が測定された。
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