研究概要 |
ユネスコにおいては,1971年に人間と生物圏(MAB)計画を発足させて以来,「生物圏保存地域」を活用した活動に焦点を当てに取り組んできた。「生物圏保存地域」とは,持続的発展を支える科学的知識・技能や人間的価値を深める機会を提供する"場"として国際的にその価値が認められている,代表的な陸上および沿岸環境の保護地区のことである。我が国では,1981年に志賀高原,白山,大台ケ原,大峰山,屋久島の4個所が認定された。 本研究では,国内の生物圏保存地域の生態系の修復に着目し,それらの地域をそれぞれ植生生態,土壌生態,気象生態,湖沼(海)生態の4つの視点から調査研究し,生物圏保存地域に認定された当初の状況と比較し,その変化および人的影響を究明している。さらに,当該地域の住民などを対象として当該地域の活用状況についても調査を行う。これらの調査に基づき,国内の生物圏保存地域の総合的なレビューを行い,報告書をまとめ,ユネスコに提出するとともに,今後当該地域の保護と活用の方策に貢献することを研究の目的としている。 調査初年度の平成9年度は,生物圏保存域内のコア・エリアおよびバッファーゾーンを対象として,4個の調査軸でフィールドデータを収集し,比較解析を行った。4軸とは,地球環境科学の視点から(1)植生生態,(2)土壌生態,(3)気象生態,(微気象および物質収支),(4)湖沼(海)生態の4つに焦点を当てている。自然災害・人間的影響が及んで劣化している生態系および回復状況に関するデータは,ユネスコ・MAB国際調整理事会が求めているレビュー報告の中身である。MAB計画の本年度の活動状況については,年報およびニューズレターにおいて公表した。
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