研究課題/領域番号 |
09410004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
一ノ瀬 正樹 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教授 (20232407)
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研究分担者 |
下野 正俊 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (70262053)
高橋 克也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助手 (50251377)
高山 守 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20121460)
天野 正幸 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (40107173)
松永 澄夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (30097282)
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キーワード | 知識 / 技術 / 社会的実践 / 知的所有権 / 人格 / 物神崇拝 / 身体 / 言語 |
研究概要 |
本研究は、知識と人間の実践、とりわけ社会的実践との複雑な関係の解明を目的とする。同時に、知識と実践を結ぶ概念としての技術に注目しつつこれをなそうとするものであった。もしもある社会における知識の存在や、ある人における知識の所有が、何らかの抽象的な心的状態としてしか記述できないものならば、知識が我々の実践をかくも変容させる理由は説明できないだろう。むしろ知識の存在・所有は一つの実在的なものの所有と行使によく似ている。我々は、このような認識をもつことが、認識と行為の関係に関する基礎哲学的研究にとって肝要であるだけでなく、現代社会の諸問題に対応する際に不可欠の視点であるとの考えを、本年度の研究によって強めることができた。例えば、知的所有権ということが問題になりうるのは、知識の所有が資本の所有に似て、収入の持続を保証する実在的な効力をもつがゆえに、保護の対象となる、という事情があるからである。他方、同じ理由から、知識の所有に物神崇拝的に固執することの危険性も指摘できる。例えば、受験勉強で一定量の知識を得たというだけで人を賞賛するのは、お金をためた人を賞賛することに似た倒錯なのだ。この場合、知識が活動態においてこそその真実態にあるのだということが見失われているのである。 このような共通認識のもと、本年度は、一ノ瀬、松永、高橋、下野が理論的・体系的見地から直接に知識と技術の問題を追求し、天野、高山は哲学史的な見地からのその補強を行った。特に、人格を法的な規約と実在的な過程とが交錯する場に成立するダイナミックな概念であると捉えた一ノ瀬の仕事は、知識をその帰属主体たる人格との関係において論ずることを可能にし、我々の研究の柱を形成した。また、人間が身体と空間に関する基本的な言語表現を比喩的に延長して、複雑な問題を論じうる概念体系を形成してきた、という事態を考察した下野の仕事も、実践と思考の関係に関する基礎がために寄与したと言える。
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