言語理解におけるフレーム問題の認知的研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09410006
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 美濃 正 大阪市立大学, 文学部, 助教授 (70181964)
• 研究分担者: 横山 輝雄 南山大学, 文学部, 教授 (80148303) ; 大沢 秀介 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50233094) ; 服部 裕幸 南山大学, 文学部, 教授 (40110754) ; 戸田山 和久 名古屋大学, 高等教育センター, 助教授 (90217513) ; 柴田 正良 金沢大学, 文学部, 助教授 (20201543)
• キーワード: 人工知能研究 / フレーム問題 / 人間的認知の枠組み / 言語理解のモデル / 脳の情報処理過程 / 心的表象 / 自然言語における指示のモデル / 人間的認知を表現しうる論理言語

研究概要

人工知能研究における難問としてまず指摘されたフレーム問題は、一言で言えば「有限の情報処理能力しか持たない推論主体がいかにして膨大な情報を扱えるのか」という問題であるが、人間は何らかの仕方でこの問題を解決ないし擬似解決することに成功している。本研究の目的は、人間におけるこのような認知過程を可能にしている枠組み(フレーム)のあり方を、特に言語理解のケースを中心として明らかにすることであった。
最終年度である本年度は、このような人間的認知(特に言語理解)の枠組みの暫定的モデルを得ることを目標として、前年度までの研究を引き継ぎつつ、つぎのような共同研究活動を行った。3回の研究会を名古屋、京都および札幌において開き、主として以下のテーマについて外部から招いた講師をまじえて研鑚を深めた。脳における情報処理過程と心的表象との関係について、篠原成彦(信州大学助教授)、岡庭宏之(金沢大学非常勤講師)、中川大(北海道大学助手)の各氏による講演と共同討議を通じて新しい知見を得た。自然言語における指示のモデルについて、この問題に関する独自の理論を展開している伊藤春樹氏(東北学院大学教授)とのかなり徹底的な討論を行い、研究を深めた。人間における認知過程を忠実に表現しうる論理的媒体(論理言語)に関する最新の研究成果について、竹内泉(京都大学助手)と中戸川孝治(北海道大学助教授)の両氏から学んだ。
この3年間におけるわれわれの研究成果の一部は「研究成果報告書」に収められている。その概要については、同報告書の「はしがき」を御覧頂きたい。この3年間にわれわれの研究はかなりの進展を見、一定の成果をあげたと信じているが、当初の目的をすべて達成したとは言い難い。今回の研究をさらに発展結実させるため、今回の研究課題に関わる内容の論文集の公刊を計画中であることを付記しておきたい。

研究成果

• [文献書誌] 美濃 正: "クオリアなんて怖くない:クオリア・マニフェスト(哲学ヴァージョン)"『科学哲学』(日本化学哲学会). 32・2. 39-51 (1999)
• [文献書誌] 美濃 正: "行為とはどのような存在者か?:行為と身体運動再考(上)"『人文研究』(大阪市立大学文学部). 51(第1分冊). 23-39 (1999)
• [文献書誌] 美濃 正: "価値は実在するか?:マクダウエル説の批判的検討"『アルケー』(関西哲学会). 8(発表予定)(未定). (2000)
• [文献書誌] 横山 輝雄: "科学的生物学と民間生物学"『アカデミア・人文社会科学編』(南山大学). 69. 457-470 (1999)
• [文献書誌] 横山 輝雄: "相対主義と科学/技術"『思想としての科学/技術』(岩波書店). 181-207 (1999)
• [文献書誌] 横山 輝雄: "社会構成主義と相対主義"『哲学雑誌』(哲学会). 114・786. 130-143 (1999)
• [文献書誌] 柴田 正良: "癒すべき病いとしての自己犠牲:田村論文「自己犠牲の倫理的分析」についての一試論"『金沢大学文学部論集行動科学・哲学篇』. 19. 161-175 (1999)
• [文献書誌] 柴田 正良: "あれかこれか?:行為の因果説と心の非法則性"『哲学』(日本哲学会). 51(発表予定)(未定). (2000)
• [文献書誌] 戸田山 和久: "科学哲学のラディカルな自然化"『科学哲学』(日本科学哲学会). 32・1. 29-43 (1999)
• [文献書誌] 戸田山 和久: "哲学者は心の科学に何が貢献できるのか:「心の哲学」の目指すもの"『こころの科学』(日本評論社). 86. 9-14 (1999)
• [文献書誌] 戸田山 和久: "Philosophers meet A-Life:人工生命研究は哲学をどう変えるか"『第20回システム工学部会研究会・人工生命の新しい潮流:資料』. 61-66 (2000)
• [文献書誌] 柏端 達也: "過去の未来性と言われていたもの:プラグマティズムの歴史理論をデューイ,ミード,C・Iルイスを中心に再検討する"『西洋哲学史の再構築に向けて』(昭和堂). 358-378 (2000)
• [文献書誌] 柏端 達也: "時間に関してオズマ問題は存在しないか"『哲学の探究』. 27(発表予定)(未定). (2000)
• [文献書誌] 大沢 秀介(共著): "21世紀の哲学"八千代出版. (2000)