本研究は、沖縄の音楽や音文化について「外からの視点」で観察することにより、ここに新たに提案する「応用文化学」のための巨視的な視野を探究することを主目的としている。さらに、1)沖縄および周辺地域の音文化、2)沖縄および周辺地域の打楽器と弦楽器、3)声の表現のさまざま、それぞれに関する基礎研究および調査をおこないつつ、4)当研究以前に、また当研究と平行して研究代表者と分担者が蓄積した学術的フィールド体験や人的ネットワークによる意見交換の結果に照らし合わせて、社会との互恵関係を目指すべき学問のあり方を社会に問うことを副次的な目的に据えている。 具体的には、沖縄の音文化および音楽の古今について、遠近周辺の文化(たとえば、日本本土、朝鮮半島、中国南部・ベトナム・オセアニア・オーストラリア)のそれらと比較しつつ、人間の聴覚的感受性や芸術的音楽性の異同を追究した結果当初掲げていた作業仮説「打音と弦音が織りなす音響空間を支える身体語法」が「声のさまざま」と並んで沖縄音楽の根幹をなすものであり、現代的な文化交流において重視されるべき側面であると結論づける。すでに沖縄で消滅した宮廷音楽(御座楽)を中国・朝鮮・ベトナムの宮廷音楽(雅楽)との関係から類推して復興させる研究がなされつつあることに着目して、沖縄文化を外から観察する当研究の成果からヒントを提供することや可能であろう。その際に類似の打楽器や弦楽器に秘められた文化的異同を繊細な感性表現の結果として読み解くことが肝要である。
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