研究課題/領域番号 |
09410022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 寿一 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (30172894)
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研究分担者 |
長谷川 真理子 専修大学, 法学部, 教授 (00164830)
能智 正博 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (30292717)
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キーワード | 進化心理学 / 推論 / 4枚カード問題 / 認知的性差 / 心的回転 / 記憶 / 殺人 / 文化間比較 |
研究概要 |
近年欧米の心理学研究では、進化生物学的アプローチがクローズアップされ「進化心理学」という新領域が形成されるようになった。一方、わが国においては進化理論それ自体の普及の遅れもあり、進化的視点にたつ実証研究はこれまでほとんどなされてこなかった。平成9年度の本研究では、この内外格差を取り戻すべく、以下のような研究、研究発表、研究評価、啓蒙活動を行った。まず、実証的な研究としては、進化心理学の古典的研究ともいえる4枚カード問題(WS課題)の理論的検討を行った。Cosmidesが主張した「裏切り者発見」効果についてはすでに我々の追試でも確認済みであるが、本年度は代替的な説明の可能性を詳細に検討した。この結果は、総説論文として発表予定である。また「裏切り者」をいち早く検知する機構は、記憶課題でも作動するどうかを、囚人のジレンマを1週間間隔で繰り返して行ない選択行動を行動レベルで検討した。その結果、「裏切り者」よりも「協力者」に対して強い選択性が認められた。次に、認知的性差を検討するために、神経衰弱課題と2次元の心的回転課題の性差を実験的に検討した。前者は先行研究とは異なり性差がみられなかった。後者も3次元課題では強い性差がある被験者で性差が見られなかった。さらに、日本の殺人について統計分析と判例の分析を通じて進化心理学的に調査した。その結果、日本の殺人に通文化的パターンが見られると同時に、とくに家庭内殺人では文化固有性も認められた。これらの研究成果の一部は米国の人間行動進化学会で発表した。1997年11月に来日した進化心理学の代表研究者、Daly,Wilson両博士から研究の評価をあおいだ。啓蒙活動としては、月例の「人間の進化的理解研究会」を主宰し、同研究会のメーリングリストも発足させた。
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