研究課題
本研究の目的は、まず、行動実験で立直り反射の消失時間、体温低下、活動量の変化等を指標として、fyn欠失マウスのアルコール感受性の亢進を確認し、次に、行動実験で明らかになったアルコール感受性の亢進の生化学的なcorrelatesを調べ、さらに電気生理学的なcorrelatesをSlice preparationで調べることである。本年度の成果としては、ホモfyn欠失マウスでは、立直り反射の消失時間を指標としたアルコール感受性が、対照群のヘテロfyn欠失マウスよりも亢進していることが明らかとなった。しかし、コントロールとしてベンゾジアゼピンの一種であるフルラゼパムを投与した場合についても調べたところ、フルラゼパムにたいする感受性では差が見られなかった。このように、ホモfyn欠失マウスにおける立直り反射の消失時間の延長効果はアルコールに特異的であった。なお、実験群と対照群で血中のエタノールの濃度を測定し、両群間で差がないことも確認できた。行動実験で明らかになったアルコール感受性の亢進の生化学的なcorrelatesを調べるべく、チロシンリン酸化されたタンパク質に特異的に結合する抗体を用いて、Western blottting法により脳内のチロシンリン酸化されたタンパク量を調べたところ、ホモfyn欠失マウスでは、対照群で見られるようなアルコール投与による180-kDタンパクのチロシンリン酸化のup-regulationが見られないことが明らかとなった。次に、免疫沈降法により、ホモfyn欠失マウスで異常が見出された180-kDタンパクが、NMDA受容体サブユニットNR2Bであることも同定できた。
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