運動視を通して視覚的注意(Visual attention)を精神物理学的測定する研究を行い、今年の成果については予備的なものについてはARVD(フロリダ)ECVP98(オクスフォード)で発表の計画を立てている。本年度の研究経過について述べる。我々は注意の研究に2つのアプローチをとってきた。ひとつは線運動錯視を用いた研究で、もうひとつは運動視を用いた空間的注意の研究である。線運動錯視は注意の効果が線分検出器の入力より前の段階ではたらくことを示すと解釈されている。興味深いことに線運動錯視には100ミリ秒までにボトムアップ的に作用する受動的注意(passive attention)とそれ以降数秒までトップダウン的に作用する能動的注意(active attention)の2種があることがわかった。運動視を用いた空間的注意の研究では、複数の運動パタン(1次・2次)を画面上に提示し、その運動の方向や種類(1次・2次)の視覚探索を行なわせた。その結果、空間的注意に伴う運動検出が時間的に早い成分(受動的)と遅い成分(能動的)の2つのタイプからなることが示された。 線運動錯視については主要設備として視覚刺激提示用コンピュータを用いている。このコンピュータは高解像度のCRT画面に線運動錯視実験に必要なオリエンテーション、色、輝度、形状などの異なるタ-ゲツト刺激やcue刺激を高速で提示することができる。さらに、運動残効についてもやはり視覚刺激提示用ワークステーション(SGI)を用いる。この実験では数個から数百個の運動するランダムドットを生成する。実験の計画と実施は代表者が行い、実験の実施、ソフト・ハードの制作調整は蘆田および研究協力者として大学院生(博士後期過程2名、修士過程2名)が担当している。
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