研究概要 |
本研究の目的は,蜂や蝿などの他の昆虫類や犬や猫といった哺乳類の自然画像を刺激として,(1)その刺激画像に含まれるどのような特徴の変化が認知されやすいのか,さらに(2)どのような特徴に対しても,追加変化が削除変化より認知されやすいという非対称的混同効果が認められるのか,(3)特徴変化の認知されやすさの特徴による違い及び非対称的混同効果が,認知発達の早い段階から存在する生得的性質を有するものであるかどうかを検討することであった.さらに,得られた結界に対して,従来の諸理論を批判的に検討し,新たに,画像認知に関するモデルの構築を行なう計画であった. 本年度において,実験に用いる刺激パターンの作成と,コンピュータによる刺激の呈示、被験者の反応の記録を自動的に行うシステムを構築し,これらのシステムを用いて、実験の刺激材料として使用可能な刺激画像を,図鑑や実物標本を撮影し,デジタル化した.次に,上記のシステムを用いてデジタル化した蝶や蜂の自然画像のそれぞれについて,前翅,後翅,触角,腹部,頭部のいずれかに追加,もしくは削除変化を加えた刺激を作成し,実験材料を作成した.どの特徴の,どのような種類(追加もしくは削除)の変化に対して敏感であるかを実験的に検討した.その結果,(1)蝶画像では前翅,蜂画像では腹部の変化に対して人間は敏感であること,さらに(2)蝶画像においては,ほとんど全ての特徴において,追加変化が削除変化より認知されやすいという,従来広く認められてきた非対称的混同効果が確認された.上記の結果が,(1)他の生物画像(例えば描画像)においても成り立つのかどうか,(2)特徴変化の認知されやすさの特徴による違い及び非対称的混同効果が,認知発達の早い段階から存在する生得的性質を有するものであるかどうかについては来年度検討する予定である.
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