本研究では、従来のカテゴリー研究が用いてきた刺激である幾何図形、ドットパターン、略画などではなく、自然画像なかでも生物画像を刺激としてそのカテゴリー化の仕組みについて研究を行った。その結果、生物画像を呈示しその再認を求めると、画像の各構成成分の再認記憶に及ぼす貢献度には顕著な違いがあることが明らかになった。蝶では前翅の貢献度が高く、蜂では腹部の貢献度が高かった。このことが人間の環境適応上持つ意味について議論された。また、同じ特徴の変化であっても追加変化が削除変化よりも認知されやすいといういわゆる非対称的混同効果は従来の研究と同様認められたが、猫を刺激画像として用いるとその効果は逆転することが明らかになった。そして、その背景に印象(典型性、奇異性など)の変化があることが示唆された。さらに、従来の研究には追加・削除変化と逸脱・復元変化が交絡しており、こうの交絡をコントロールした研究では逸脱変化においてのみ追加変化優位の非対称的混同効果が認められた。さらにこの背景に印象変化が関わっていることが確認され、さらにこのような成人を被験者として得られた知見は幼児を被験者とした実験においても同様に得られた。 今後、自然画像認知の特性をさらに明らかにするためには、本研究によって非対称的混同効果が生起するための一つの重要な要因として指摘された印象変化がどのようなメカニズムで画像の認知プロセスに影響を及ぼしているか明らかにする必要がある。
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