ハトの海馬損傷によって障害が見られなかった課題は以下のものである。 1)DRLスケジュール:反応間時間の分布を検討したところ損傷の前後で差がみられなかった。 2)遅延交替反応:遅延時間8秒での損傷はほとんど効果を持たなかった。 3)自動色弁別形成:赤と緑の自動弁別は海馬を損傷しておいた個体でも、統制個体と同様に弁別が形成された。 4)自動位置弁別の維持:2つのキイを使った自動位置弁別形成後に海馬を損傷してもその効果は認められなかった。 他方、次の課題では海馬損傷によって顕著な障害が現れた。 5)自動位置弁別形成:2つのキイを使った自動位置弁はあらかじめ海馬を損傷しておくと形成できなかった。 以上のことからハト海馬は短期記憶には関係せず(1、2)、また色の長期記憶にも関係せず(3)、位置記憶の維持にも関係しないが(4)、位置記憶の獲得には深く関与していることが示唆された。
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