CES-Dで測定された心理的健康度と生活上の変化との関係を分析した。その結果、忙しさとか家族内の変化が起こっても心理的健康を保っている人が多く、ストレッサーと心理的健康度との関係を緩衝する要因を考えなければならないことわかった。分析の結果、いくつかの候補が見つかった。サポートの有無やそのできごとと自分自身の存在との関係などであった。例えば、仕事の忙しさは心理的健康度を損ねる働きをもつものだが、もしそれが自分自身の存在理由となっているとすれば、むしろ心理的健康度を保たせる働きをもつことがわかった。 エリクソンの理論にもとづいて測定された心理社会的発達尺度と様々な活動やCES-Dで測定された心理的健康度との関係を分析した。心理社会的発達尺度への回答結果にもとづいて因子分析をした結果、まとまりのよい自我状態と呼べる因子を抽出することができた。まとまりのよい自我状態因子は、CES-Dとポジティブに相関した。様々な活動との相関関係を見ると、性差があることがわかった。男性では、仕事関連の活動とまとまりのよい自我状態因子とがポジティブに相関した。仕事関連の活動をポジティブに評価している人はまとまりのよい自我状態因子も高かった。一方、女性では仕事以外の活動をポジティブに評価している人のまとまりのよい自我状態因子が高かった。この結果は、自我のあり方が様々な領域での活動と関連していることを示していると同時に、活動の意味が男女で異なっている可能性を示した。自我状態との関連で見れば、男性の方が女性に比べて活動領域が狭いのではないかと考えられる。
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