研究概要 |
人間の行動が、その自己認識の特質と密接の関わることは、近年、文化心理学がつとに強調するところである(北山1997,波多野・高橋1997,柏木・北山・東1998)。特に、日本人においては、他者との関係で相互に"気持ち"を察し組み入れながら行動する枠組み、「関係性」の重要性が指摘され、親によるしつけや学校教育など社会化の様相が文化比較研究によって検討され明らかにされてきている(東・柏木・ヘス1981,東1995,柏木1988)。 本研究は、そうした流れを踏まえながら、日本人の関係性の心理的構造をより日常的な態度・生活・行動について検討することにより、その機能を明らかにするものである。特に、他者との相互依存性関係性の依拠しているとされる日本人の心理構造を、次の2つの研究から、実証的に検討した。 研究1では、発達的・社会心理学的関係性への検討として、より日常的具体的な文脈における心理と行動を取り上げた。感情の理解や表出は、言語的コミュニケーション以上に非明示的であり、かつ意識化された判断や規制が作用すること少なく、それだけに当の社会文化の対人関係規範がより強く反映していると考えられる。こうしたことに注目して、本研究では従来の感情研究において主たる方法である条件統制的実験的方法をあえてとらず、日常生活のなかで具体的に経験している感情体験を取り上げた。 研究2では、「関係性」の一つの端的なかたちである家族を取り上げ検討した。様々な社会変動にともない、家族が変化しているといわれる。言葉で言わなくても、お互いの気持ちを察しあい、各人が役割期待に添って行動することで調和が保たれる、いわゆる「近代家族的」な家族像が過去のものとなってきたこと、さらに現代の家族間、家族関係の様相を明らかにすることを目的として、質問紙調査、インタビュー調査、を行った。分析結果を国内外の学会、国内の学会雑誌(紀要)に発表した。
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