研究課題
大学の社会的評価について、評価のあり方に関する研究と、現実的に可能な評価の事例研究とを並行して行い、両者の成果をもちよるアプローチをとった。1.評価の手法について調査したところ、あらかじめ用意した評価尺度を機械的に適用するような方式のほか、評価される側が評価に積極的に参加する方式(共同評価)があった。後者は、数量的な評価基準が簡単には確立できないような領域で用いられるものとされていた。2.科学社会学の成果を援用して、大学の社会的評価を「大学外部に対して、専門的内容を非専門的に説明するコミュニケーション」ととらえ、そのような概念の有効性を検討した。これは、大学を構成する個別専門分野の専門性がきわめて高度であると仮定した極端な場合のモデルである。その対極には、大学の活動が一般人にとって完全に理解可能であるというモデルが考えられるが、両者の中間により妥当な設定があることになろう。3.社会的評価の現実的なひとつの形態として歴史的評価をとりあげ、各大学の『年史』などにどのような内容が盛り込まれているか、いくつかの事例について調査を行った。その結果、システムの出力にあたる教育と研究の成果については相当の記述があるものの、入力にあたる予算額などについては、必ずしも充分な記述がみられない場合があった。