研究課題/領域番号 |
09410087
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
染谷 臣道 静岡大学, 人文学部, 教授 (20091548)
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研究分担者 |
辻 秀子 帯広畜産大学, 畜産学部, 助手 (30003114)
網野 房子 専修大学, 法学部, 講師 (10285075)
松岡 悦子 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (10183948)
片多 順 福岡大学, 人文学部, 教授 (90037052)
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キーワード | 健常高齢者 / 文化特性 / 地域的変異 |
研究概要 |
(1) 健常高齢者を多く生み出す地域例 (A)奈良、大阪そして高野山にも近いという立地条件下にある和歌山県の紀ノ川沿いおよび紀伊水道に面した地域では次のように活発な健常高齢者が多く見られた。(1)強い祖先崇拝の保持者(祖先と子孫への責任感、祖先からの守護の確信、清浄な気持ちが確保できるという)。(2)地域社会におけるリーダー的存在。(3)若いときからのキャリア(保健婦、置物造りなど)を生かして社会的に貢献している人。(4)居合道に生き現代日本文化を批判し、精神に張りをもっている人。(5)(山水画や仏画など)趣味の奥義に到達しようという意欲を持っている人。(6)社会的貢献にせよ趣味にせよそれらを共有できる仲間が身近にいる人。(7)高齢になってからも新たな趣味(詩吟、短歌、陶芸など)に挑戦しつづけている人。(B)山梨県山梨市では未婚時に製糸工場で働き、結婚後に養蚕で主導的な役割を果たした過程で得た知識・技術および生活態度が今日の健常性を生んでいる例が見られた。(C)必ずしも有利とはいえない山村生活ではあるが、自ら先祖伝来の土地を離れない生き方を選択している健常高齢者の事例は福岡県で見られた。そこでは、(1)若者が転出しても高齢者は自らの判断で居残るという自主性が見られた。土地を離れないのは祖先崇拝と関係しているのであり、上記のような祖先崇拝による健常高齢促進要因をここでも見出すことができる。(2)同じ文化を共有する友人、知人、親戚が多い。(3)転出した若年者に農産物を送ったり訪れたりして積極的に関係を保っている。(2)健常高齢者を出さない地域例 孤立しがちな地形であることや、冬には雪に閉ざされるといった気候条件のもとでは孤立しがちな生活を余儀なくされ、結果として目立った病気に侵されてはいない高齢者ではあっても健常とはいいがたい事例が岩手県で見られた。彼らは自らの生活を行政に頼りがちで、受身的な生活を送っている。
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