研究課題/領域番号 |
09410087
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
染谷 臣道 静岡大学, 人文学部, 教授 (20091548)
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研究分担者 |
松岡 悦子 旭川医科, 大学医学部, 助教授 (10183948)
伊藤 眞 東京都立大学, 人文学部, 助教授 (60183175)
片多 順 福岡大学, 人文学部, 教授 (90037052)
網野 房子 専修大学, 法学部, 講師 (10285075)
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キーワード | 健常高齢者 / 文化特性 / 地域的変異 / 文化人類学 |
研究概要 |
近代化の影響が最も大きいと思われる大都市において、健常高齢者が、彼らをとりまく社会文化環境に対してどのように適応しようとしているのか、という問題に焦点を合わせて調査を行なった。その結果、伝統に依拠して健常を保とうとする試みの一方で、ポストモダン的状況に適応する形で健常を保とうとする試みも見られた。すなわち、前者に関しては、(A)伝統的な社会的紐帯によって社会性を保ち、健常を維持する 東京都墨田区の零細企業が多い地域の高齢者の場合、郊外に転居した孫子たちとの絆を保ちつつも住みなれた土地を離れない、つまり血縁的関係も地縁的関係も保つことで社会性を確保して健常を保っている。また、後者に関しては、(B)高い流動性の中で社会性の創出して健常を保つ 東京の豊島区では人口の流動性が高く、高齢者は社会性を喪失する傾向にあるが、地域の行政とボランティア活動が連携をとりながら「ちょっとしたきっかけ」を作ることで社会性の作り出している例がみられた。(C)高齢者がもつ知識と伝統を伝えるボランティア活動で健常を維持する 東京都墨田区では、高齢者が戦争の被害を子孫に語り継ぐ「語り部事業」や地域の冠婚葬祭に積極的に関わる形で「心豊かな人情の町」を復活する社会的役割を担って健常を保っている。(D)新たな人生を切り開き、「選択縁」的に社会性を創出して健常を保つ 東京、京都、大阪、兵庫、旭川では高齢による喪失よりも新たな技芸を獲得し、その共通した技芸を通じ、あるいは、共通の考えや趣味を通し、趣味活動や政治運動あるいはコンサート、民踊、オペラなどの公演活動を通して健常を保つと同時に社会性を創出して健常を保っている。
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