研究課題/領域番号 |
09410092
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岸田 裕之 広島大学, 文学部, 教授 (10093585)
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研究分担者 |
角重 始 広島文教女子大学, 教授 (50177482)
三宅 紹宣 広島大学, 学校教育学部, 教授 (10124091)
頼 祺一 広島大学, 文学部, 教授 (50033494)
秋山 伸隆 広島女子大学, 国際文化学部, 教授 (60142337)
西別府 元日 広島大学, 文学部, 助教授 (50136769)
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キーワード | 交通景観 / 海の道 / 肥前唐津・平戸地域 / 日本海水運 / 海防 / 大ザビエル展 / 世界図 / 国宝弘法大師空海展 |
研究概要 |
本研究の特徴は、「交通景観」の復元のうえに、それと「文書世界」の結合をはかる点にある。 今年度は、中国地域と、琉球ならびに薩摩・大隅地域の交通・交流の主要な海の道である対馬海流にのってそれを中継した北部九州、とくに肥前唐津・平戸地域の各地の史跡を研究者共同で巡検した。筑前今津の元寇防塁・誓願寺に始まり、名護屋城博物館・名護屋城跡、唐津の歴史民俗資料館・末廬館・久里双水古墳、平戸の松浦史料博物館・観光史料館・オランダ商館跡・平戸城、そして有田の九州陶磁文化館・今右衛門古陶磁美術館等々、原始・古代・中世・近世・近代の遺跡や遺物について調査を行った。温泉津や浜田などを主要な港町として展開した日本海水運は平戸を経て南九州と交流していたが、16世紀に東アジアから「南蛮」=ヨーロッパを含む世界に広がったこの地域の豊かな国際性を確認できたことは、有益であった。また、江戸時代末期に洋学の学習に努めて成果をあげた宇和島審の遺跡・遺物の調査も研究者共同で行った。瀬戸内海の航路である豊後水道に面していることが、海防等についての対策を緊急なものとしたと言える。 これに関連して、研究者共同あるいは単独で、山口県立美術館、山口県文書館、山口県史編さん室、毛利博物館、下関市立長府博物館、福岡市博物館、香川県立歴史博物館、徳島市立徳島城博物館、高知県立歴史民俗資料館、高知県立美術館、東京大学史料編纂所等において、未刊・未見の関係史資科の蒐集調査を進め、新出文書の発見を含め、貴重な成果をあげた。 また、これらの成果のほか、各地で開催されている展覧会の図録を入手して、研究課題解明のための視野を広げるとともに、共通の認識を深めた。たとえば、『大ザビエル展』には、16世紀中頃以降にヨーロッパで作成された世界図が多く掲載されているが、その中で日本列島は次第に形が整い、また地名も山口・銀鉱山(石見銀山)・都から次第に増していくことから、ザビエルが銀の島として注目した日本に対するヨーロッパ人の認識が流通経済面から注目できた。また、『国宝弘法大師空海展』は、関係する遺品の学術的価値の貴重さはもちろんのことであるが、厳しい修行をへて、交通上大きな危険をともなう古代に中国に渡海して宗教・学問・技術等をおさめた空海の精神力というものに時代を越えて生き続ける精神文化の礎、ならびに真言宗の信仰の篤い四国の地域性を見い出した。
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