平成9年度、共同研究発足当初に共同研究実施のための予備的な話し合いを行い、各自の分担領域を確認した。それに基づいて、各研究者は次のような分野に関する文献・史料の調査と収集を行い、その考察と分析を開始した。合阪:古代地中海世界における人口移動、川瀬:イランを中心とする古代オリエントの人口移動、江川:中世の異端と人口移動、塚本:ドイツ30年戦争以後の人口移動、川北:世界システム論と人口移動、藤川:オーストラリアへの女性移民とアイルランド系移民、山本:アイルランドへのイギリス系入植者の意識、大西:オランダ都市と移民、山田:近代ドイツと移民、竹中:現代ドイツと移民、原田:ナチス・ドイツと移民、藤本:ソ連とロシアの人口移動。 史料の収集と分析と並行して、経過報告を兼ねた研究発表を川北、藤川、山本、塚本、大西が行った。川北は、世界システムの人口移動に与える影響、奴隷制廃止と世界システムの関連、人種意識に対する規定的な影響などについて論じ、藤川は、オーストラリアへ行った女性移民の意識やアイルランド系入植者の意識について論じた。また、山本は、アイルランドに対するイギリス人入植者の意識がイギリス人のアイデンティティ形成に与えた影響について論じた。塚本と大西は、当該時代における人口移動・移民研究の制約について発表した。このうち藤川・山本については、その成果の一部が平成10年度中に出版される予定である。
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