平成10年度には、共同研究に新たに杉本が加わり、フランス植民地における移民のイメージ問題を課題とした。前年度に引き続き、各研究者は次のような分野に関する文献・史料の収集や分析、研究発表を行った。川瀬:古代オリエント世界の人口移動、合阪:古代地中海世界の民族移動、江川:中世の異端と人口移動、川北:世界システムと移民、藤川:オーストラリアへの移民、アイルランドからの移民。山本:アイルランドへのイギリス人移民、大西:オランダ海上帝国と移民。山田:近代ヨーロッパの移民(ドイツを中心に)、竹中:現代ヨーロッパの移民と人種意識(ドイツを中心に)、原田:ナチス・ドイツと移民。藤本:ロシアの人口移動。 また、2次的な特定テーマ別の共同研究としては、川北、山本、藤川がイギリス帝国における人口移動と民族意識という観点から、イギリス国内・海外におけるイギイス人意識について報告した。また、杉本もフランス帝国という観点からその検証に加わった。塚本が共同研究メンバーから外れたために、宗教と移民の関係について十分な成果は得られなかった。世界帝国や世界システムと移民の関連については、17世紀のオランダ海上帝国、海外移民と都市構造の関連、世界システムと移民との関連について大西が貴重な報告を行い、ジェンダーと移民とのについては、藤川がオーストラリア(キャンベラ)での史料調査の成果に基づいて、19世紀の女性移民について、とりわけ中産階級の女性移民と彼女たちが書き残した史料の問題性に関する報告を行った。
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