研究課題
基盤研究(B)
日本の旧石器時代、縄文時代、弥生時代、以後の北海道の文化について、石器、土器、骨角器その他の遺物、住居、墓制などをとりあげ、各時代における文化領域の広がりを明らかにし、その変化を追跡した。また各時代について、どの程度日本列島に独特で固有の文化領域があるのか、東アジア全体の視野で考察した。1.佐藤は後期旧石器時代について、環日本海地域という広く弱いまとまりの中に日本列島諸地域のまとまりがあり、時間の進行とともに小地域差を顕在化させていく過程が明らかにした。2.今村を中心とする縄文時代については、各種文化要素の比較から、列島内における地域差よりもはっきりとした差が北は宗谷海峡、西は朝鮮海峡、南は沖縄本島の南側に引かれることが明らかにされた。九州は縄文時代をほぼ通じて独自の地域色を示すが、奄美諸島、沖縄諸島と南下するにつれてその文化要素が順次減少していく。このことは沖縄諸島の文化が縄文文化の延長上の位置することを示す。3.後藤を中心とする弥生時代には朝鮮と北部九州の間での文化要素の共有がかつてなく高まるが、基本的な地域差も継続する。北部九州から東に北に移動するにしたがって文化要素が漸次脱落する傾向が著しい。4.宇田川・熊木による北海道は、縄文時代以降近世まで、独自性と本州との交流が交錯しながら推移する。さらに北方の樺太千島地域との関係を示す証拠は、縄文期には少なく、続縄文期にやや高まる。特異な位置を占める石刃鏃やオホーツク文化を除くと北方との関係が主流になることはないようである。本課題の成果については、報告の原稿量が大きいこと、広く一般への還元を行なう価値があるので、研究成果公開促進費を申請し、学術図書として出版する予定である。
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