研究期間3ヶ年の2年目である平成10年度は、研究対象地として、山口県豊浦郡豊北町角島と沖縄県南風原町を選び、戦争遺跡の調査とこれに関わる情報の収集に努めた。 調査地の一つである山口県角島は響灘に浮かぶ離島であり、昭和14年に下関要塞計画の一環として、砲台が築かれたことで知られる。現在、砲台の周辺は畑地として利用されているが、コンクリートで固められた砲台の台座と弾薬格納庫が残っている他、砲台を維持していた部隊の宿舎や倉庫、監視台なども、ほぼ旧状を保っている。今回の調査では、これらの施設の状況確認を行うとともに、格納庫については内部実測図を作成した。また、この砲台に関する文献資料の収集も行った。 沖縄県南風原は前年度から調査地として選んでいるもので、本年度も陸軍病院南風原壕群と津嘉山経理部壕の調査を行った。陸軍病院南風原壕については、これまでの調査で検出された薬瓶をはじめとする資料の確認と写真撮影を進め、津嘉山経理部壕については現況測量調査を継続して行った。 本年度の調査は、沖縄だけではなく、これと他の地域の戦争遺跡とを比較検討するための資料収集に重きを置いた。これによって、沖縄の戦争遺跡の個性というものが抽出できるとともに、広く日本やアジアにおける戦争遺跡に取り組む手掛かりとなるものと考えられる。次年度については、完了できなかった津嘉山経理部壕の測量を継続するとともに、これらの成果を総合化する作業を進めて生きたい。
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