人類定住に関するエスノ・アーケオロジー研究として4年計画の調査を行なう中の第1年度は、岐阜県宮川村での山村生活について、岩手県浄法寺町での漆利用の技術についてのフィールドワークによる調査を行なった。山村生活の用具・行動・技術の研究を行なうなかで空間構造についての理解を深めた。また木地師・漆かき・塗り師の用具・行動・技術の研究を行ない、その多工程技術の記録をまとめた。 鍛冶屋の工房・用具・技術についての研究を行ない、工房空間の構造を記録した。集落の全体の測量図を作成し、その空間利用を聞きとりした。また地藉図・土地利用図を入手し、集落の周辺空間の利用・所有環形を聞きとりした。 また、二町・村の資料館に収蔵されている物質資料の分類研究を行ない、その記録との照合から物質資料と人間の関係についての理解を深めた。考古資料としての物質・構造物を人間(人間集団)との関係について、ミドルレンジをつくり検証を行なうことで、結びつきを説明しようという試行研究のスタートとして、着実な一歩をふみ出したといえる。本年度の成果は『人類誌集報1998』として3月中に概要報告書としてまとめ刊行する。また研究参加者によって別途学界誌に発表する予定もある。 両地域とも考古学的調査が盛んであり、次年度以降は考古学的資料についても検討の対象としていくつもりである。
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