(1)岐阜県宮川村における調査では、8月に西忍地区を中心として「水利調査」を行った。集落設計に地形環境・湧水・沢をうまく利用し、多様な水利施設を配置しての定住生活システムが記録できた。 (2)宮川村の調査では、考古民俗館収蔵の、草木を編んで作った様々な生活用具の調査を並行して行った。目的に合わせて素材を選択し、編み方を変えた技術群が解明された。 (3)岩手県浄法寺町では、2月に「漆掻き」職人の道具形状と使用者の身体や経験との対照調査を行った。道具形状に使用者の体格や意識によって決まる部分がある事が分かった。 (4)岩手県安代町の漆器木地調査では、9月に同種製品の近似関係についての多変量解析調査を行った。素材の段階と製品の段階での類型に、場合によっては技術者間の意識差があることが明らかになった。 (5)青森県田子町の鍛冶屋の調査では、9月に道具形状を必要に応じて変形させて使う技術者の存在を記録できた。以上のような調査から、(1)人類の空間意識とそれを活用する技術群を考皮ることの重要性。(2)道具形状のその様相の把握は、従来の考古学が器物の類型化を時間軸や空間の差として議論しがちであった考古学的思考への警鐘。といった知見を得ることができた。その成果の一部は、研究室で12月に刊行した『人類誌集報2000』に、昨年までの調査成果と合わせてすでに発表済である。
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