研究課題
本研究は、地中レーダーの方法を応用して、広範囲にわたる遺跡である集落や官衙遺跡を対象に、1)発掘調査に必要な地下情報を提供すること、2)遺跡の構造と性格を推定すること、3)全体の範囲を限定して遺跡の保存に資すること、を目的としている。この目的達成には、まず、地中レーダー探査における有効探査深度の増大を実現することを課題として取り組み、これが達成できた以後は遺跡の実際へ臨んでの測定の例を増やして汎用性のある方法として確立する方向で進めてきた。本年度に探査を実施した遺跡には平城宮跡(奈良市・奈良県)、原の辻遺跡(石田町・長崎県)、永山遺跡(吉松町・鹿児島県)、日高遺跡(高崎市・群馬県)、吉野ヶ里遺跡(神崎町・佐賀県)など多数ある。このうち、平城宮跡と原の辻遺跡では従来応用できなかった40と70MHzという低い周波数のアンテナを用いて、測定の可能性拡大を図ったものである。そして、少なくとも4m程度の深さが普通に探査できることや、分解能の問題はあるが、大きな構造物を目的とした場合には有効であると認定した。しかしながら、原の辻遺跡では対象とした運河遺構が深くて湿潤な粘土質の土壌下に埋もれているために、これらのアンテナによっても季節や天候によって、すなわち土壌条件によっては期待どおりの成果があがらないことも再確認した。永山遺跡では、深い層位にある地下式横穴墓を捉えることに成功した。日高遺跡においては、従来知られていなかった中世の居館跡の存在とそれの範囲を推定できた。吉野ヶ里遺跡では甕棺墓を少なくとも86基を捉え、それらには空洞を保つもの、崩落した状態にあるものと区分できるという成果をあげた。
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