研究概要 |
研究代表者日野龍夫は,本居宣長の最初の師匠である堀景山の随筆『不尽言』について,注釈的な研究を行った。『不尽言』は,宣長の「物の哀れを知る」の説の萌芽ともいえる思想を述べている点で,重要な文献であるが,これまで注釈がなく,部分的に利用されるにとどまっていた。このたびの日野の研究は,この書の十分な活用への道を開くものである。 研究分担者木田章義は,中世五山文学の中で,大きな影響を与えた『碧巌録』の受容の問題を扱った。『碧巌録』の日本国内での受容と注釈の歴史をたどり,寿岳本『碧巌録』と松ヶ岡文庫の『碧巌録』との対比から,両本の性格を明らかにした。 研究分担者大谷雅夫は,『萬葉集』から中古・中世の和歌文学における漢詩文受容について研究した。具体的には,『萬葉集』の七夕歌が中国文学をどのように受容したか,また『新古今集』時代の和歌が平安時代の日本人の漢詩文からどのような影響を蒙ったかについて考え,詩の表現が和歌に受容される諸相を明らかにすることを通じて,和歌と漢詩,双方の表現の特色を知ることに努めた。
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